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セルフヌード
第2章 美しさという暴力
* * * * * * *
美優は自宅に帰り着くや、食卓を彩る良の手料理にたちまち食欲をそそられた。
独身の時分、食事はインスタントで済ませていた美優の良人は、三十路を控えて初めて台所に立つ習慣をつけた。
良は、美優の好物ばかりこしらえる。粉チーズのかかったフリルレタスのサラダに、ニンジンとレンコンの煮物、若鶏のマッシュポテト和え、マヨネーズのたっぷり乗った卵焼き──…。
今日も例に洩れなかった。
おまけに良は、美優が月曜日に磨くつもりでいたガラス窓を、全て磨いておいたという。
尽きることのない会話に笑って、風呂上がりのコーヒーを傾けながら肩を並べてテレビを観て、腕を組んで寝室に入る。…………
ものの数時間で夢から覚めた。さばかり破廉恥な夢だった。
美優は不貞を恥じた。仕方がないと言えばない。
抵抗一つも許されなかった。美優はあまねく選択肢を奪われていた。
強制され、よがったのだ。
あばずれな女を気取るのは、インターネット上で十分だ。もっとも、その限定的な快楽のために、美優はなつみにゆすられたのだが。
相手が女であったことが、不幸中の幸いだ。腹に植えつけられる毒もない。
「美優」
良のささめきが美優を顫わす。寝間着を優しく除かれながら、美優は人懐っこい微笑に安心しきった声をこぼす。自ら下着を床に投げ出す。