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セルフヌード
第3章 愛玩
* * * * * * *
『少女crater』は、夜の森に佇む少女がソフトカバーを飾っていた。
夜の森は鏡の樹林だ。セーラー服をまとった少女が虚ろな目を浮かべているのは、見澄ますと畳一畳もない程度の花と緑の空間で、鏡が奥行きを広げている。少女は後づけの合成らしい。
奢侈な金の装飾文字が、かの著名をあらわしていた。
「どういう風の吹き回し?」
「どういうって?」
「こんな本を問い合わせてくるなんて、私、聞き間違いかと思ったもん。中身、綺麗な子ばっかりだよ。みーこの嫌いな」
「──……」
客の買い物に暗に干渉しかけてくる店員は、二週間前、なつみとのデートのために裏工作に補翼してくれたはるこだ。
美優のアパートから電車で三駅離れた町の、大手チェーンの書店。雑誌や話題書は言わずもがな、趣味実用や旅行ガイド、いわゆる裏通り的ととくくられよう書籍まで、なかなかの品揃えの店だ。
足を運んだ甲斐あって、写真集は見つかった。
そしてここははるこの職場だ。
この種類の本を買い求めた経験を持たない美優にとって、たった一人で知らない店員から購入するより、心強かった。