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セルフヌード
第3章 愛玩
「それって、私がひがみ屋みたいじゃない」
「実際、みーこは、頭も顔も平均的な、この私が大好きでしょう」
「自分のこと、そんな風に言っちゃダメ……」
「みーこだって言ってなかった?恋して変わったのかな。お化粧だって、……コスメ変えた?良先輩とますますお熱くなってるようで」
美優は手提げ袋を受け取りながら、はるこの冷やかしに笑ってあしらう。
モデル達より、本当は、彼女らを収めたカメラマンこそ美しい。
さっきから喉元に湧き上がってくる反駁を胸裏に押しこみ、美優は落ち着かない胸を諌める。重みを増したトートバッグを持ち直す。
「はるこ、お化粧って、ちょっと研究すると楽しいと思う。私はること久し振りにゆっくり会いたいって思ってたんだ。今度一緒に見に行かない?」
「ほんとに大丈夫?熱、ない?」
「ひどいっ。はるこは私より元が良いから、もったいないと思って言ってるだけなのに!」
「みーこ本当に心配……。うーん、みーこは、可愛いよ。でも私は年相応に年をとっているし、ここに手を加えても」
美優は額に伸びてきた片手をかわして、机にも向かわないで自分は出来ないと匙を投げる、学童を咎める教師の目つきではるこを睨む。
毛先の曲がったボブの黒髪に、気立ての良い身性の滲み出た目許。丸い鼻先に頰は下目蓋を押し上げるほどふくよかだが、はるこの場合はそれが愛嬌になっている。背丈は美優より十センチは高い。洋服の選び方次第でもっと魅力的になるのに、と、改めて見れば見るほど惜しくなる。
「村山さーん、◯◯社の『テンペスト』、ストックありましたっけー?」
「あ、はいっ。……ごめんみーこ、今度お茶しよ。また連絡する。お化粧は付き合わないけどね」
はるこの指が美優の前髪を小突いた。
美優は心地好い重みを孕んだトートバッグの持ち手を握って、雑踏に出た。