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セルフヌード
第3章 愛玩
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きらびやかなスタジオは、適度な緊張感に混じって、ほっとするような波長がたゆたう。
美しくあることが当然の、自己評価のほどはさておき、求められるイデアを務めるモデル達は、洋服のため、オーディエンス達のために、自身を愛して炫耀する。
真新しい洋服に、真新しい化粧品、服飾雑貨──…豊潤な嗜好品を湯水のように消費して、最高の絵を仕上げる工程の中で、スタッフ、モデル、その場にいる誰もが華美を極める行為に何の疑問を持つことなく傾注する。
自然の美。人工の美。
優れているのが一方に限ると、誰に決めつけられるだろう。
一瞬一瞬のカットの中で、万別の表情を演じるモデル達は、なつみにとってひとときの天使だ。
彼女らは微笑み、笑い、時にすまして時に唇を尖らせる。遠くを見つめて奥ゆきを垣間見せたかと思うや、悪戯なえくぼを浮かべる。
こうした現場で関わっても、業界人同士が私的なところにまでえにしを持ち帰ることは皆無に等しい。皆無に等しい稀有なケースに、なつみはのべつ行き当たる。現場で初めて顔を合わしただけであっても、特別に目立つモデルは特別になつみに懐く。
恋だの愛だのは一対一の関係こそ、道徳的だ。
それでも、満遍ない愛を注いでやれる自信はある。可愛い女達を全員恋人と呼びたいものだ。
なつみは、たった数ページのために数多のシャッターを切りながら、何とかしてポリアモリーを生きられないものかと、気が抜けるにつけてあられもない空想に引きずりこまれた。…………