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セルフヌード
第3章 愛玩
「休憩入りまーす」
「お疲れ様です」
「お疲れ様でーす。ちょっとちょっと、さっきから思ってたんだけど、かずちゃんそのイヤリング可愛い!」
「しおりはネイル可愛いね。どこのサロン?」
「駅前に出来た◯◯だよ。今日なつみ様が撮ってくれるから、頑張ってもらってきちゃった」
「良いわねぇ、若い子は面食いで」
「そういう横井さんだって、嶋入さんのカメラに写る時はお肌つやつやですよね」
「パック念入りにしてくるもの。……てか、なつみさんの神業にかかればどんなブスでも綺麗に写るレベルなんだけれどね、モデルがカメラマンよりだらしない肌をしていたら、ダメじゃない?」
「実は意識してるんじゃないんですか」
「もう、何であんなにカッコイイのっ。しかもちょっと可愛いし!二度美味しいよぉっ」
「私、男やめて嶋入さんに絞っちゃおうかな。どうせ今の彼なんて平社員で終わるんだし、それに引き替え、嶋入さんなら将来も安泰っ」
「真子ー。彼氏に言いつけるよ。大体、なつみ様がわざわざ貴女一人を贔屓になさるわけないでしょう」
華やかな談笑のさざめきを離れて、なつみはビルのエントランスに降りていった。
みずみずしい花達を眺めているのも飽きないが、春は、本物の花が活気づく。
「なつみ」
甘辛い風を連れて、ふっと、思いがけない逆光の影が現れた。
「総子さん。お久し振りです」
「良かった。メールしようと思ったの。ちょっと近くに寄ったものだから。休憩?」
「はい。十五分くらい」
「そっか。残念。いや、そうでもないかな。運試しに来てみて、会えただけでも儲けものだわ」
「お仕事ですか?」
「ええ、今ライターもやっていて、……。帰るとこだったんだけど」
女のいなせなかんばせが、子供のように綻んだ。
十年前からまるで変わらない、なつみは溌剌とした生気に潤う恩師に、解散予定時刻を伝えた。