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セルフヌード
第3章 愛玩
…──私が守る。
見知らぬ女はか弱く凛々しい女に向かって、確かにそう唇を動かした。美優がご主人様と呼ぶ人を、真摯に見つめて。
美優は、カフェの一角を見つめていた。
なつみと、そして四十代半ばと見られる、しとやかな貫禄を備えた女。
つややかな黒髪は美優と同じほどの長さに切り揃えてあり、シンプルなスーツをさらりと着こなす長身は、働く女特有のたくましさがまといつく。
この近辺に、良の勤める広告代理店がある。
美優は『少女crater』を購入した後、目新しい店並を散策していた。
途中、良を待ち伏せ、彼を驚かせようと思いついた。三時間ほど余裕があった。それで美優は時間を潰した最後の一時間、ここでゆるやかな時間を過ごすことを決めたのだ。
『少女crater』は想像を遥かに超えていた。
美優は傍目を気にすることも失念して、発売当時、自涜のマテリアルとも揶揄されていた写真集を、穴が空くほど眺めた。そして久しく顔を上げた時、視界に飛び込んできたのが、例の二人だったのだ。
偶然が美優の目の錯覚でないことは、一方の女の存在が証明していた。
錯覚なら、なつみだけを見かけたはずだ。
何を話しているかは分からない。ただ、なつみは美優に見せないような顔を見せ、女も真剣な顔をして、なつみに何やら説いていた。
「…………」
若い女は論をまたない。そしてついにはひと周り以上も年長の女まで、手篭めにしていたというわけか。しかも美人で、知的だ。
美優は、何故、なつみに会うのか。
何故、言いなりになるのか。
美優が痴態を許すことが、なつみの日々に何を与えるのか。
スーツの女が朗らかに笑う。
気心知れた感じの片手が姫スタイルの女のそれに伸び、指先を絡めとるようにして捕まえた。