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セルフヌード
第3章 愛玩


「んっ、……」


 とろけるような甘い皮膜が、美優の吐息を封じた。

 蝶が花蜜を啄むように悪戯なキスは、なつみにしては素っ気ない。それでいて美優から確実に正気をとり除く。


 最低だ。
 愛し愛される人を持ちながら、こんな風に、ただ欲望の果てに引きずり込もうとする人に、身も心も傾けてしまう。

 胸裏で自身を罵ることが、今の美優の贖罪だ。

 無理矢理な持論をこじつけて、美優はなつみの陥穽に自ら捕らわれてゆく。


「はぁ、……」

「美優」

 痺れるような余韻を吐き出しきるのも待たないで、なつみの指が、美優を包むシャツのボタンを外していく。

「あの、バッグ……濡れてない?」

「ああ、そう言えば大事そうに抱えてたね。壊れ物?」

「……お漬物」


 なけなしの抵抗など皆無に等しい。

 なつみの手がスカートのホックを外しにかかった。ファスナーを下ろす。美優はみるみる下着姿になった。


「この間のお洋服の、お礼にもならないけれど。お漬物、漬けたんだ。良くんには好評だから、なつみにもらって欲しくて」

「──……。うそ、……」



 小分けにしてリボンをかけたタッパーを、なつみは受け取ってくれた。

 人当たりの良い女たらしは、胡瓜とニンジンの糠漬けを見るや絶賛した。
 顔良し頭良し性格良しの、娘に似て完璧を絵に描いたらしい母親も、食卓に並べる漬物はインスタントだったという。
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