この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
セルフヌード
第3章 愛玩
「んっ、……」
とろけるような甘い皮膜が、美優の吐息を封じた。
蝶が花蜜を啄むように悪戯なキスは、なつみにしては素っ気ない。それでいて美優から確実に正気をとり除く。
最低だ。
愛し愛される人を持ちながら、こんな風に、ただ欲望の果てに引きずり込もうとする人に、身も心も傾けてしまう。
胸裏で自身を罵ることが、今の美優の贖罪だ。
無理矢理な持論をこじつけて、美優はなつみの陥穽に自ら捕らわれてゆく。
「はぁ、……」
「美優」
痺れるような余韻を吐き出しきるのも待たないで、なつみの指が、美優を包むシャツのボタンを外していく。
「あの、バッグ……濡れてない?」
「ああ、そう言えば大事そうに抱えてたね。壊れ物?」
「……お漬物」
なけなしの抵抗など皆無に等しい。
なつみの手がスカートのホックを外しにかかった。ファスナーを下ろす。美優はみるみる下着姿になった。
「この間のお洋服の、お礼にもならないけれど。お漬物、漬けたんだ。良くんには好評だから、なつみにもらって欲しくて」
「──……。うそ、……」
小分けにしてリボンをかけたタッパーを、なつみは受け取ってくれた。
人当たりの良い女たらしは、胡瓜とニンジンの糠漬けを見るや絶賛した。
顔良し頭良し性格良しの、娘に似て完璧を絵に描いたらしい母親も、食卓に並べる漬物はインスタントだったという。