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セルフヌード
第3章 愛玩
目を細めるほど煌びやかな炫耀が降り注いでくる密室で、美優はなつみにキスを求める。
「今日の美優、甘えただ。男と別れて私に乗り換える気になった?」
「そんな、こと……ない、けど……」
「今なら乗り換え無料だよっ」
「っ……!!何のセールス──……ん、ふ……」
身体が口先を無効にした。
美優はスプリングコートをバスケットに預けて、胸をなつみに押しつける。
白い綿レースがあちこちを飾るデニムのジャケット、そして花柄のフリルスカート。しどけない美優とはまるで違って完全防備のなつみの身体に、道徳を冒した衝動を訴える。
家庭を持つ美優が情人に懐いているのではない。
誰もが慕うカリスマを、哀れな女が懐いているだけ。
分かっているのに、止められない。
「今日は、離れたくない……気分なの」
「美優、……」
…──一緒に入って。
化粧は、人格を変える。良にも言えない一言が、せり上がるように喉をついて出た。
なつみの憂いだぬくもりが、綺麗な双眸に潤沢を落とす。
強かな黒。儚げな黒。
軽率な女を絵に描いたような装いをまとっていながら、何故、こうも美優の胸を逸らせるのだ。
…──格好良い。
血迷ったような感慨に、きっと今に殺される。
キスが美優の唇を濡らす。今日だけでも何度目か振り返れない抱擁が、美優を包む。