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セルフヌード
第3章 愛玩
華やかな自然のステージに、ひときわ賑わいが増した。
小学校の遠足か。
教員らしい二人の女を先頭に、ぞろぞろと学童達の群れが近づく。
「貸切とれてなかったのっ?」
「とれてるはずだよ。通りかかっただけじゃない」
「いやいや、困る。もうじき撮影再開だし」
花蓮が腰を上げたその時だ。
群れの中心に、なつみは幻のような姿を見つけた。
「っ……」
「…──?!」
ほぼ同時に目が合った。
教員らの内、一人が、やはり幻にでもまみえた目を見開いて、草原から抜け出してきた。
「うそ……え?!あたし……あたしだよ、分かる?なつみよね?」
朗らかな表情、いかにも面倒見の良い人となりを含蓄する顔かたち。まっすぐに伸びた黒髪を高く結い上げ、前掛けをつけているのは、高等部までクラスメイトだった元親友だ。
「りの……?」
「そう!うそー!うそでしょっ?なつみモデルやってたの?知らなかったー」
「モデルじゃないよ。カメラ担当」
「なるほど、だから春服。どっちにしろすごーいっ」
「りのは小学校の先生?」
「児童養護施設だよ。《ひかりのそら》。あたし勉強出来ないし。皆の遊び相手なんだー」
「花蓮。彼女、篠村りの(しのむらりの)っていって、昔のクラスメイト。そういうわけだから、大目に見よ?」
「どうも。木之原花蓮です」
「ごめんなさいっ、お邪魔でしたよね。知らなくって……すぐ出て行きますから」
「良いです良いですっ、この子ちょっとへこんでるので、慰めてから出て行って下さい」
「そうなんですか?」
「女性を泣かせてしまったみたいで」
「花蓮泣かせてまでは──」
「おぉぉぉっ、さすが!なつみいつかやらかすと思ってた」
再会したばかりの友人に向かって、りのが大仰に両手を叩いた。
デリカシーの欠片も備わらないスタイリストと、児童達を放ったらかしにしてサボタージュする児童養護施設員。
二人になじられ、激励とも謗りともつかない説教を聞いている内に、なつみは昨日の美優の言葉などぬるい程度だったのだと骨身にしみた。