この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
セルフヌード
第3章 愛玩
* * * * * * *
はるこの書店を出たあとは、どこにも寄らないでまっすぐ帰った。
掃除を済ませ、洗濯、郵便物の整理をしている内に、もう日暮れだ。
なつみから連絡はない。
出逢ってから今日までの間、少なくとも一日一通はメールが届いていた。こうも突き放されたなら、喪失感にも打ちのめされる。
鳴らない電話。期待外れのメールばかり受信するスマートフォンを、もはや手許にも置いておきたくない。
戯れにも満たなったのかも知れない。
なつみをとり巻く白鳥達の群れの中で、美優はさばかり毛色の変わったアヒルだった。
分かっていたのに思い上がった。
なつみの引力は狡猾だった。姫君の見目を気取っていながら、その振る舞いはことごとく真逆だ。
美優でなくても不貞の罪悪にくずおれる。美優の分別が脆弱なのでは決してなかった。
そう、ことあるごとに美優は自分を正当化して、ついには狡猾な引力の備わるカリスマを試したのだ。
追いかけてきて欲しかった。美優が彼女を拒んでも、それでも執着していると、捕まえようとして欲しかった。
「…………」
財布から前日のレシートを抜き取って、一枚一枚畳んでいた途中、ふと、我に返る。
…──今、何を思った?