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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
 承平の手のひらが薫子の艶やかな髪を愛しむように撫でる。ふいに紐を使って後ろで一括りにした髪が解かれた。シュルリと、夜陰に紐の解ける音がやけに大きく聞こえる。
 手のひらで頬を挟んで仰のけられた薫子の顔のすぐ側に承平の顔が迫っていた。互いの吐息さえ聞こえるほどの近さだ。
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