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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
 もしかしたら、彼が朝になるまで出ていかなかったのは、私が前言を翻すことを期待していたから? 〝行かないで〟と私が引き止めることを彼は最後まで望んでいたというの?
 今になってもなお未練な考えに囚われてしまう自分が哀しかった。彼の身体も心も既にここにはないというのに。
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