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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
 薫子は小さく首を振り、長い物想いから我が身を解き放った。渡殿を忙しない脚音が近づいてくる。あの歩き方は間違いなく継母だ。今、庭の酔芙蓉はまだ慎ましい薄紅色だ。どうやら、あの人が来たようだから、この花たちの色がすっかり濃くなるまで滞在することは難しいようだ。
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