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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第2章 酔芙蓉の簪(かんざし)
「小吉(こきち)、小吉っ」
 子どもの母親らしい。男の子をひしと抱きしめて号泣する母親が薫子をまるで生き仏を拝むように両手をすり合わせた。
「ありがとうございます。本当にありがとうございます」
 薫子は首を振り、倒れ伏したままの男を見た。
「私ではありません。この人が助けてくれたのです」
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