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月下の契り~想夫恋を聞かせて~
第3章 噂の姫君
 異変はその夜に起こった。夕刻には屋敷を出るつもりだったのだが、姉が明日の朝、朝餉を一緒にと熱心に望んだため、やむなく屋敷に泊まることになったのだ。自分の家なのだから何の問題もないはずなのに、どうも落ち着かない。
 いつしか薫子にとっては市井の粗末な仕舞屋の方が心から寛げる我が家になっていた。
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