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人魚姫の唄声
第1章 人魚姫。
 大学では、将来図書館での仕事がしたくて司書を目指し勉強をしている。
 
「碧、今日はなんか綺麗じゃない?」

 大学の同じ文学サークルの畑中瑛子が声をかけてきた。
 確かに今日は髪を巻いて、いつものラフな格好ではなく淡い小花柄のワンピースに厚めの白いカーディガン。ちょっと高めのヒールを履く。

『二十歳のお祝いに、義兄が食事をご馳走してくれるんだって。』

「あら、いいわね。」

 サークルの部屋には私と瑛子、あと数人が端のテーブルで談笑している。
 缶コーヒーを持ちながら、一人の男がやってくる。

「なんだ、デートか?」
 
 高遠春樹が声をかけてきた。
 瑛子はハエを追い払う様に手をシッシッ、と動かした。

「その態度はなんだよ、瑛子。もう合コンセッティングしてやらねーぞ。てか、碧は誰とデートなんだよ?」

『義理の兄。』

「は?なんだ、男平気になったのか?」

 瑛子と春樹だけは私の事を知っている。
 春樹にいたっては、一度エッチをしようと試みた相手。キスまではできたけど、それ以上は続かなかった。

『相手は姉さんの旦那さんだよ?身内だもの。平気。』

 確かにそんな意識もある。だから、握手も出来たし、部屋に一緒にいても苦痛じゃない。
 そっか。身内だからだよね。
 妙に納得し、スッキリさせる。

 春樹は訝しい表情をしたが、それ以上は何も言わなかった。



 拓海の会社近くにある、喫茶店で待ち合わせる。フッと見るとビルの合間に大きな病院がある。
 その名前は栞のいる病院と同じ。
 二人はこの病院で出会ったのね。
 
 アイスコーヒーを飲みながら待つ。時間は七時過ぎ。
 スーツ姿の拓海が席まで来る。

「ごめん、待ったかな?」

 静かに首を振る。
 二人で喫茶店を出て、タクシーに乗る。
 
 連れて行かれたのは、高層ビルに入っている高級なフレンチレストラン。
 こんな所ははじめてで、少し驚く。
 拓海は気後れしている私の手を引き、席に促す。
 大きな窓の側の席で、20階からの夜景に感嘆する。

『素敵。とても、きれい。』

「今日は誕生日だから、ワイン飲もうか。」

 拓海は赤ワインを注文する。

「碧ちゃん、プレゼントは決めた?」

 料理を待つ間、私は夜景を飽きもせず見る。キラキラ輝くネオンに、欲しいものをみつける。

 それは心に燻る欲望。

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