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人魚姫の唄声
第1章 人魚姫。
 バラバラに壊してくれたらいいのに。
 拓海の思う様に作り直してほしい。

 私を好きだと言ってるけど、それでも栞を愛しているんでしょうね。
 私を栞と同じように作り直して、私を愛してほしい。



 姉は私より十三歳上で、小学生から成績優秀。ずっとクラスでは委員長を務め、友人も多く信頼できる優等生。家でも父や母の期待を一身に受けていた。

 一方、私は空想の世界に住んでいた。

 父は普通の家庭を上流に取り繕うのに必死だった。母は姉の習い事や塾に力を入れていた。年の離れた、次女は結局のところただの厄介者でしかない。

 本だけが、私の糧であり、支えだった。

 姉は大学を卒業し、看護の道に進む。

 父と母の呪い。
 看護師になり、医師の妻となるべく育てられた、哀れな姉。

 可哀想な、栞。

 でも、今は違う。
 拓海に愛された、栞。
 拓海を愛した、栞。

 そんな、栞になりたい。



 拓海とマンションに帰る。時間は零時前。
 真っ暗な部屋に入ると同時に、私のケータイに栞からメールがくる。

『お誕生日、おめでとう。素敵な一年間になりますように。今日は急に泊まりになりました。戸締りをしっかりね。おやすみなさい。』

 メールを拓海に見せる。
 リビングの明かりをつけ、少し寒い部屋の暖房を入れる。

「仕方ないね。看護師はどこも人手が足りないから。」

 拓海はそう、呟きスーツの上着とネクタイを外す。それをソファの背にかけ、他のメールを確認していた私の後ろに立ち髪に顔を埋める。

「…碧。」

 その抱擁に身をまかせる。
 
 拓海に抱かれたい。
 身体を繋ぎたい。

 二人の視線が絡み、お互いの思惑が重なり合う。
 身体を求め、その声は夜の静寂を切り裂く。
 
 拓海の手が服の上から胸を弄る。
 堪えきれない衝動に少し躊躇う。
 こんなに、拓海に狂ってしまった私は拓海なしでは生きていけない。

 唇を重ね、その暖かさと温もりを感じる。
 柔らかい唇は私の名前を呼ぶ。

「碧…碧。」

 私も拓海の名前を呼びたい。

 この声で、名前を呼び愛を語り交わしたい。

 なんで、出ないの。
 苦しいよ。
 悲しいよ。

 私を誰も助けてはくれない。

 水の中でもがき、苦しむ。

 魔女が囁く。

『人魚姫。お前がほしい物は何だい?』




 





 
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