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これはお仕事です。
第2章 家族
全く思い出せないといった素振りで、美和は辰治の顔を覗き込んだ。
「思い出せなくても無理はない、最後に会った君はまだ6歳だったからね。」
思い出が蘇る。
優しい笑顔と目尻の皺、身長が高く当時も威厳のあった声。
「たっちゃんさん?」
そうだ、あんなに大好きだったおじさん。
毎日の様に会っていたのに急に会えなくなり沢山泣いたっけ。
美和は、少し興奮気味に答えた。
「嬉しいね。覚えていてくれたんだね。大きくなって。」
美和の目の前まで歩みを寄せていた辰治は、大きな手で美和の頬を撫でた。
知り合いだったとは言え、男性にこんなにも優しく触られた美和は恥ずかしさを隠しきれずに耳を赤くした。
「た、たっちゃんさんにこんなところで会えるなんて凄く嬉しいです。」
まともに目を見れなくなり、口籠りながらも気持ちを伝えた。
そんな他人から見ても少し照れてしまう光景に焦りを感じた松野はつい、声を張った。
「高城さん!!!!社長に向かって呼び名も言葉使いも失礼よ!!」
いきなりの松野のお叱りにびくりと肩を揺らす美和。
「松野くん、いいんだよ。今は久しぶりの再会なんだから。」
優しい声で征した辰治は、少し席を外してくれないかと松野を社長室から退室させた。
罰が悪くなった美和は松野に対して会釈をし、謝罪の感情を伝えた。