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これはお仕事です。
第2章 家族
少しの間思い出を語り合う二人。
あの時の美和は腕白であったとか、お母さんの香澄は本当に綺麗だったが負けん気が強いなと思い出話を進んでする辰治に、美和の緊張は解れていった。
「香澄、お母さんは残念だったね。」
避けていた話題を辰治が口にした。
「はい。素敵な母でした。」
美和の母、香澄は美和が12歳の時に父親と共に交通事故で亡くなっていた。
兄弟もいなかった美和は、家族が2人もいなくなり
それまで天真爛漫であった性格から、今の暗く地味な性格へと変貌してしまったのだ。
祖父の家で暮らしてはいたものの、お金に余裕がなかった美和は友達とも交流せず、必死に勉強し特待生として有名大学へと入学を決めたのだ。
「お母さんのお葬式行けなくてごめんね。仕事でトラブルがあってなかなか行けなかったんだ。お墓参りには良く行っているよ。」
先程まで美和の目をまっすぐ見つめていた辰治は、視線を落として謝った。
「いえ、誰かが母と父のお墓を綺麗にしてくれていたこと知ってました。社長でしたか。それを聞けて嬉しいです。」
たっちゃんさん、と呼んでいた明るい雰囲気から元の美和の暗い雰囲気へと戻ってしまった。
大好きだったたっちゃんさん。
今思えばなぜあんなに頻繁に会っていたのだろうか。
父がいない時ばかり家に来ていたのは覚えているが、父と4人でご飯に行った覚えもある。
父、母、たっちゃんさんで仲が良かったのだろう。
しかし、何か理由があり私達に会うのをやめたのだ。
お葬式に来づらいくらいの理由があったのだろうか。
急に他人行儀になった美和を必死に元に戻そうと辰治は明るく話し出した。
「実は入社した後に新入社員名簿を見て美和ちゃんの名前を見つけたんだ。だから入社したのは、美和ちゃんの力だよ。頑張ったね。」
いえ、と褒められるこに慣れていない美和は素直にありがとうと言えずに恐縮した。