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これはお仕事です。
第2章 家族
「大丈夫だよ。僕の家はマンションみたいなものでね。お手伝いさんもいるから君は何もしなくていいんだ。
僕もあまり家にいる方じゃないからね、気を使わずに生活できると思うよ。」
それにと、落ち着きを取り戻し静かなトーンで続けた。
「君が家族を失った悲しみを僕に埋めさせてくれない
「家族。」
美和は、その言葉だけをぽつりと呟いた。
美和が家族という言葉に反応したのは、過去の人生で様々な後悔があったからだ。
家族ができる?
お婆ちゃんには良くしてもらったけど、きちんと甘えることはできなかった。
迷惑をかけては駄目。ただひたすら勉強に費やしてきた学生生活はけっして楽しいものではなかった。
挙げ句の果てに、おばあちゃんは私を可愛くない孫だと邪険に扱っていた。今思えばその通りかもしれない。
わがままも言わない、泣きもしない、怒りもしない、笑いもしない。
そんな子供がいるとしたら私くらいだ。
恋人も友達も家族も、
信頼して甘える人を見つけることができなかった。
それはきっと、お母さんとお父さんとの最後の会話。
今でも毎日夢に出てくる。
この後悔が消える?
人生をやり直すチャンスがもしかしたらここにあるのかもしれない。
ああ、社長は本当に私のことを心配してくれているのかもしれない。
この人になら甘えてもいいのかな。
辰治の思い溢れる好意を無下にできなくない。
もう、後悔はしたくない。
美和は決心した。