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それでも・・愛してる
第8章 比べてみても・・
自分の席に戻り、やりかけの仕事に手をつけたが、なんとなく上の空状態になった。
若い夫婦に何度も視線を向けてしまう。
嬉しそうに夫の顔を見つめる妻。
自信があるのかどうかわからないけど堂々としている夫。
その後ろ姿には、家族を背負ってる感がしっかりと表れている。
オレが守ってる感・・
これって、普通なの?これが普通の家族なんだ・・?これで・・いいんだ・・・
「石田さん、封筒ください。大きい方」
杉下さんの声で我に返る。
棚から書類用の封筒を取り出し杉下さんに渡した。
何枚もの物件案内のコピーをまとめて封筒に入れ、
「おうちでもじっくりとご検討下さい。
実際ご覧になりたいものがありましたらご連絡ください、ご案内しますので」
杉下さんは名刺も一緒に渡した。
ちょこんと一礼した若夫婦は、はしゃぎ気味に店を後にした。
その後ろ姿を見送りながら、なぜか私はため息を漏らした。
なにに対してのため息なのか?