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それでも・・愛してる
第8章 比べてみても・・

「不動産屋に来るお客たちを見てたらやっぱり家族って、いいものなのかなぁってさ・・」

2人同時のため息が、二重奏のようになる。
私のは漠然としたモヤモヤ。
陽斗のはきっと、失った虚しさ・・

「今日来たお客・・まだ30にもならない若い夫婦。
 アンタたちが家買うの?って思わず見入っちゃうほどよ。だけど・・
 私にはそんなふうに見えた若い夫婦でも、世間から見れば別に普通なのよね・・」

ふと思いつき、手をあげるとさっきのオヤジがやってきた。
焼酎のお茶割りを注文するとすぐに運ばれてきた。
そのグラスを掴んでもすぐには口に運ばす、しばらく手で揺すって
無意味に氷の音を奏でた。
その音に陽斗も耳を傾けながら、騒々しさの中でも静かな声で話しだす。

「・・で?だから羨ましくなった?そんなことで簡単に気持ちが傾いちゃったの?」

心を探るような、余裕を見せるような、
そんな陽斗の口調にちょっとした敗北感を味わいながら、
それでも鼻を鳴らし強がって見せた。


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