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それでも・・愛してる
第10章 気になる親子

静江さんの身振り手振りから、その親子をなんとか中に
招き入れようとしている様子がよくわかる。

そしてついにその親子が店の中に入って来た。
静江さんはお客に背を向けていることをいいことに、
私にむかって胸の前でVサインを作って見せる。

「どうぞこちらへおかけください」

静江さんが自分の前の椅子に座るよう促すと、
若い父親は静かに会釈をして座った。
その隣にちょこんと座る男の子の、
なんとなく寂しそうな表情が気にかかった。

その様子を横目で見ながらキッチンにむかう。
父親にはお茶を、男の子にはオレンジジュース。
そのコップを見てから父親を仰ぎ見る男の子。飲んでもいい?そう目で訴えている。
父親が頷くと、そっとコップを両手で掴んだ。

「よろしければまずこちらにご希望などお書きください」

静江さんが差し出した用紙は、探している物件の条件などの他に、
住所氏名、家族構成なども書きこんでもらうようになっている。
それに、月収も。
希望する家賃と月収が見合うかどうかはもちろん大事な事。

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