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それでも・・愛してる
第11章 会えた・・
「こんにちは。気にいった物件、見つかりましたか?」
再会できたことがなんだかとっても嬉しく思えた。
たった一度の、通りすがりの様な客だったのに。
「あ、気になさらなくていいんですよ。
みなさん何軒か不動産屋をはしごするみたいですから」
ライバル店に客を取られたみたいな深刻さを相手に感じさせないように
第三者的な言い方をしたのだが、
父親は何かを答えるよりも先に一礼し、
逃げるようにその場を立ち去ってしまった。
「あの、ちょっと!」
思わず後を追いたくなった。
私が声をかけたばっかりに、と謝りたい気持ちに駆られた。
・・やっぱり訳ありなんだ、あの親子・・
とっくに見えなくなっている後姿を探す様に
人ごみの奥の奥を、しばらく見つめた。