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それでも・・愛してる
第15章 充実した休暇・・家を探す

不動産屋が見えてきたところでふと私は立ち止り、
腰をおろして優太くんの視線に合わせてからゆっくり話しかけた。

「優太くん、お願いがあるの」

優太くんも、そして滝川さんも私の言葉をじっと待つ。

「今日はね、オバちゃんのこと、よその人の前ではママって呼んでね」

「なんで?」

体を揺すりながら聞いてくる優太くんに、大人の事情を説明したって解るわけないので、

「お遊戯会の練習だよ。そのうちね、大勢のお友達の前でお遊戯するかもしれないから、
 今から練習しておくの。優太くん、できる?」

我ながらうまい事言うな、と自分の言葉に酔いながら、幼い彼にお願いした。

「そこまで気を使ってくれて・・ありがとうございます、石田さん」

優太くんの返事の前に滝川さんの絞り出すような声が聞こえた。
彼の顔を見上げた瞬間、彼の動作を手でさえぎる。

「だめですよ、頭下げちゃ」

ハッと気がついた滝川さんは頭に手をやる。

「そうでした、すいません。さ、優太、お遊戯の練習、できるか?」

優太くんは父親を見上げて、

「うん、できるぅ!」

元気に手まで上げて答えてくれた。
これで大丈夫。
今日の芝居はうまくいく。

3人は心を一つにして、不動産屋のドアを開けた。



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