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それでも・・愛してる
第20章 待っていた客
目の前にお茶を置かれると一礼した滝川さんは、姿勢を正した。
「じつは・・家を買おうと思いまして」
彼の照れた顔、喜びが満ち溢れた顔・・
私の中にもじんわりとあったかいものが広がる。
「まあ、そうでしたか。で、そのお手伝いを私が?いいんですか?私なんかで」
賃貸物件の紹介しかできないのに、いきなり売買の話なんて、私にできるわけがない。
「売買のことなら担当の営業をご紹介します。なんといっても彼らはベテランですから。
ご希望の物件を見つけられると・・」
「いえいえ、石田さんだって立派な不動産屋さんなんですから」
私の言葉をさえぎった滝川さんは、奥さんと視線をかわしてから私に頭を下げた。
「今の部屋だって石田さんが・・とっても気に入ってるんですよ、私も妻も」
「ええ、キッチンなんてとても素敵で」
奥さんも小さめの声で彼の後に続ける。
「こんなに素敵な部屋を見つけてくれた方ですもの。
きっと私たちが満足する家を探してくれると・・
主人は絶対の信頼をおいているんですよ、石田さんに」