この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
それでも・・愛してる
第5章 陽斗からの誘い・・
「美鈴、どうした?」
ぼんやりと視線を送っていたガラスの向こうは、いつの間にか暗闇に変わっている。
遊園地の営業時間が終わり、クルクル明かりもすっかり消えていた。
陽斗に声をかけられるまでそれに気づかなかった。
「え?あ、ごめんごめん、ちょっとボーっとしちゃった・・飲み過ぎかなぁ」
見つめる陽斗の後ろに見えた父の顔を振り払うように、
自分の顔を手のひらで扇いだ。
探るような陽斗の眼をわざと見ないようにしていると、彼は何かを感じ取ったみたい・・
「自分の事、思い出してたんじゃない?」
ドキッとして、思わず目を合わせた。
それでも何も言わずにいると、静かに彼が話し出す。
「けっこう・・傷ついてるんだろ?美鈴も。
ああはなりたくないだけ、なんてさらっと言ってたけど、ほんとは
心に深く刻み込まれてるんじゃないのか?両親の離婚・・」
そんなんじゃないよ・・そんな目で見ないでよ・・
言いたかったけど、やめておいた。
そのかわりに曖昧に笑いながら首を振った。
「そろそろ帰ろうか。明日も仕事だろ?」
時計を見ると10時半過ぎ。
そうだね、と席を立った。