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催眠玩具
第9章 美獣の檻

 顔を合わせるのこれが初めてだけれど、高城さんの事は彼がアート・トリルに移って来る前から知っている。とぼけてこんな会話をしているのは、社交辞令以外の何物でもない。

 その証拠に、テーブルを挟んで向かいの席に腰を下ろした由美は、高城さんが私の後ろを回って隣の席に着く隙にこっそり目配せを飛ばして来た。

 由美の服装は軽快なパンツルックにパンプス、裾が短めで活動的に見えるが、上品で落ち着いた雰囲気も併せ持った上着を羽織っている。

 オフにはTシャツにジーンズでも全然平気な彼女がTPOをわきまえた格好をしているのは初めてかもしれない。

 普段なら、そのことをネタにして冗談のひとつでも言うのだけれど……。

 私はぎこちない笑みを浮かべてみせることぐらいしかできなかった。

「女性向けの企画に強い女性ばかりの会社と思われているけれど、男性もいて活躍しているということを知って貰いたくて……」

 彼がここにいる説明も、取ってつけたようでなんだかいいわけがましい。
 実際、取ってつけた理由なのだれど。
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