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催眠玩具
第9章 美獣の檻
そう。
まだ危険は去ったわけではなかったのだ。
名刺交換をしようとしてようやくその危険に気づき、後にしようかと考えた時にはすでに由美の方から先に名刺を取り出していた。
「初めまして、フリーランスで記者をしております。山木由美と申します」
「経理の高城です」
私に続いて名刺を交換する二人。
受け渡しの瞬間に指が当たりやしないかと凝視してしまった。
「あらまあ」
高城に向かって少し驚いたような表情を作る由美。
「アート・トリルには女性社員しかいないと思っていました」
「ハハハ、そうですね。男は僕一人ですよ」
「それじゃあモテて大変なんじゃないですか? お若いし」
「いやいや、こう見えて三十いってますから……」
「ええーっ! 全然見えないですよ!」
「ハハハ、上手だなあ……」
インタビューの雰囲気作りだろうか、由美が社交辞令を口にして場の空気を和やかなものにする。
彼女の言葉が「社交辞令」だというのは、私が由美に高城さんへの想いについて何度か相談したことがあるからだった。