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催眠玩具
第12章 二律背反

「ええ、わかります……それに、もし欠席の理由が病欠だったとしたら、その子は学校をサボって街で何をしていたのかという事になりますものね。私も恩を仇で返すような真似はしたくありませんので……」

 頷きながら、さり気なく非行の可能性を示唆してみせると、教務主任はしばらく考え込んだ後……結局、むにゃむにゃと言いながらも出席簿を確認することにしたのだ。

 事態は変化し、どうでもいい他人事から、サボリ生徒の暴き出しになった……というわけだ。

 人を動かすには、動かしたい相手の利害を知り、その中にどうやって自分の望みを紛れ込ませるかだ。

 これも亜理紗はよく口にしていた。
 マーケティングという仕事はまさにそうなのだろう。市場とはひとつの人間心理だ。

 そして、取材対象から真実を……真に伝えるべき価値のあることを聞き出すという意味において、それには私もまったく同感だった。

 少年には催眠術という強力な武器があるのかもしれない。
 けれども、私たちにだって身に着けてきたスキルがあるのだ。

 彼は大人を舐めたことを後悔することになるだろう。
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