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催眠玩具
第12章 二律背反
教務主任は気を悪くした様子もなく、最初に挨拶したときのように愛想良い顔で私を職員室から送り出してくれた。面倒がなくて良かったという所だろう。
そして私は……さて、これからどうするべきか?
教務主任とのやりとりの間に午後の二限目を報せるベルが鳴り、校舎は休み時間の喧騒から、再び授業時間の静寂に包まれていた。
人気のない廊下に佇み、この後の行動に想いを巡らす。
このまま手ぶらで帰るのももったいない。
廊下から教室を覗って、「美少年」と言えるような男子生徒がいないか探してみてもいいかもしれない。
見咎められたら……道に迷ったとでも言えばいい。
職員室を出てすぐ、そんな事を考えた所までは憶えていた。
気づいたら、私は校内のどこかの廊下にいた。
「……え?」
あたりを見回す。
なんの変哲もない廊下。
片側には教室がずらりと並んでいる。扉の所に掲げられたクラスの標識プレートからすると、ここは二年生の階のようだ。窓側の景色は高いので……おそらく私はいつの間にか上の階まで上がって来てしまっていたのだ。