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催眠玩具
第12章 二律背反
亜理紗と病院に向かったはずの彼が、そこにいた。
「どうしてって……やだなあ。待ち合わせをしたじゃないですか」
「何の……何の……事? 貴方たちは病院へ……って……」
にこやかにほほ笑みながら、近づく彼の挙動に不審なものはなにもない。
けれど、私の頭の中で警鐘が鳴った。
本能が、得体の知れない危険が迫っていることを告げる。
彼が会議室で私に襲い掛かったあの情景が目に浮かぶ。
荒い息、血走った眼……。
次の瞬間、私は彼に背を向けて駆けだしていた。
逃げるべきだ。この男は不穏だ。
何かが……何かがおかしい。
私は何を間違えていた?
罠にかけるつもりが、私の方が罠にかけられていた……?
じゃあ……じゃあ、彼と一緒にいた亜理紗は!?
ゾッと寒気が走る。
亜理紗はどうなってしまったの!?
「……待って!」
高城が呼び止める。
その声を耳にした途端に、私の脚は凍りついたように動きを止めた。
嘘……まるで自分の足じゃないみたい……。
これは……もしかして……!