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催眠玩具
第12章 二律背反

 と、そのときだった。

 視界の隅に、取り落としてしまっていた私のバッグが目に入った。こちらに口を空けて、すぐそばにある。

 そして、私の両手は……。

 動く。
 自由だ。

 私を犯すのに邪魔なので解放されたのだ。

 裸の尻に、高城の指が吸いつき、沈む。

 これが最後のチャンスだ。
 迎え入れようと盛る劣情を全意思力で押さえつけ、私は身を翻した。

 バッグに飛びつき、手を突っ込み、そして……。

「……な、ない! ないわ!」

「何がないんだい?」

 スタンガンが……と、口にしかけて高城のいやらしい笑みに気づく。
 それは、なにかの謀りごとが成功した時に浮かべる悪い笑みだった。

「フフッ……いくら探してもないと思うよ」

 まさか、車の中でこっそりと奪われて……?

 私のその思考を読んだかのように、高城が先回りして答える。

「違うよ。僕は何もしていない……ただね、それは由美のバッグじゃないんだ」

 この男は何を言っているのだろう?
 このバッグは間違いなく私のだ。

「私」……の?
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