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催眠玩具
第6章 夢の叶う時

 彼がいると周りも明るい雰囲気になる。
 ユーモアがある相手にはユーモアで返したくなるからだ。

「でも駄目よ……私はすでに高城さんの事を信頼しているもの。高城さんがいなかったら……とてもここまでやってこれなかった。高城さんには本当に感謝しているの」

「ハハッ……若槻さんも早速使ってきましたね。でも僕だって、若槻さんに受け入れて貰っているのはわかっていますし、感謝していますから……うーん、僕らには必要ないか、この技は」

 高城さんは経理処理を委託した会計事務所の人間だった。

 フリーランス時代を経て会社を設立し、人を雇って事業を拡大させ始めた私は、会計処理をアウトソーシングすることにし、彼はアート・トリルの担当として月に何度か会社に来て経理を見てくれていた。

 私の感謝の気持ちは本物だ。

 でも、それは業務上の支えというだけでなく、彼の姿勢や考え方に対してもだった。

 一人でがむしゃらに頑張っていたときには気づくこともなかったこと。
 人と人がお互いに支え合うということの意味を彼は教えてくれた。

 それは特別なことではなく、心がけていれば誰にでもできる小さなひとつひとつの事。思いやり、多くを求めすぎず、分かち合うという事。

 言葉ではなく、ただ彼が身に着けていた普段からの人との接し方、振る舞いから私は学び、感謝と……そして、尊敬の念を抱いていた。

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