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催眠玩具
第6章 夢の叶う時

「夢……?」

 悪夢?
 あの少年は……あの出来事は……私の想像の産物?

 そうだろうか?
 そんな事があるだろうか?

 記憶は夢にしてはあまりにも生々しく、細部まではっきりとしていた。

 いや、違う。

 朝の事はあまりよく憶えていない。
 いつものように出勤し……あの少年に電車の中で悪戯を……。

 それはどこか自分の目で見たのではなく……よく、幽体離脱を経験したという人が言うように、天井あたりから……別の角度から、他人がそうしているのを見ているような感覚の記憶だ。

 そうだ。
 だいたい、私がそんな事をするわけがないのだし。

 そのまま会社にも行かずに少年をラブホテルに連れ込んで……それから……それからの事も、光景は目に浮かぶけれど、どれもがあまりに突拍子もなさすぎて現実とは思えなかった。

 あるはずがない。

「ああ……っ」

 安堵の声と共に、全身に体温が戻って来た。

 そうだ、怖い夢だったのだ。
 仕事のストレスだろうか? きっとそうだ。

 それに……。
 こんなもので虚しく体を慰めてばかりいるから……。

 手にしたままになっていた玩具に目を落とし、自嘲する。

 じゃあ今は……?
 もしかして、一日中寝ていたのだろうか?

 それとも、まだ夜は明けていなくて、悪夢にうなされて浅い眠りから覚めたのか。

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