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催眠玩具
第7章 新しい人生

 何年も待ってやっと訪れた、次はいつ来るかわからない……運命が、人生が変わるチャンス。

 逃さなかった女だけが次へ進める……あれだ。

 そう気づくと急に心臓がドキドキし始めた。喉が渇き、そして口にした紅茶のぬるさに焦りが生まれる。

 この時間を、私はただ紅茶を冷ますことにしか使えなかった……。

 高城さんがコーヒーカップを取り上げて、話を締めくくるように最後のひと口を飲み干す。

「美味しいコーヒーをご馳走様。亜理紗さんはやっぱり早く休んだほうがいい。僕はこれで……」

 駄目……。

「……帰らないで」

 コーヒーカップをテーブルに返した彼の手に、私の手が重なる。

 言えた。
 でも、言ってしまった……。

 どうしよう。

 どうしよう。

 どうしよう。

 心臓が飛び出しそうだった。

 受け入れて貰えなかったら。
 今、高城さんはどんな顔をしているの?
 怖ろしくて顔が上げられない。

 重ねてしまった手だけをじっと見つめて……。

 その温もりを……もう、それだけでも良かった。
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