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催眠玩具
第7章 新しい人生

 悪戯っぽく目を輝かせて私に問い返す。

 誰が?
 催眠導入剤?

 そんなもの、いつの間に飲ませ……。

 私はハッと気がついた。

「そうさ……亜理紗が飲ませたんだよ。コーヒーに混ぜてね」

「そんな……嘘……」

「嘘じゃないさ……僕は傍で見ていたんだから」

 見ていた?
 ああ、そうだった……。

 私は電車の中のサラリーマンの事を思い出した。

 少年の姿だけを見えなくさせられたあの男。
 彼の催眠にかかった者は、自分の眼を信用することはできない。
 そして行動も。

 いたのだ。
 私が目覚めたときも、あの寝室の薄闇の中に……!

 そして操った……。

「理解した? じゃあこれから正しい順番に戻ろう」

 私の顔色が変わったのを見て、少年が満足そうに言う。

 みぞおちのあたりが恐怖できゅうっと締めつけられる。
 順番がどうであれ、彼の言う「正しい」が「正しい事」であるはずがない。

「……これから僕は彼になにをすると思う?」

「やめて……お願い。高城さんに酷い事をしないで……」

 私は絞り出すようにしてやっとそれだけを口にした。

 けれど、彼は無視してソファ越しに身を乗り出し、高城さんの耳元へ……まるで接吻でもするかのように口を寄せて……催眠暗示の言葉を囁き始める。
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