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催眠玩具
第8章 ほんとうのこと

 てっきり今日は自分が一番乗りだろうと思っていたが、セキュリティカードを通してオフィスに入ると、中は薄ぼんやりと明るかった。

 誰かいるのか、それとも灯りの消し忘れかと思いながら、受付カウンターを回って事務スペースへと足を踏み入れ、そして……

「……!」

 亜理紗は息を呑んだ。

 並んだデスクの島の上に、全裸の女が立たされていたのだ。

 頭の上に両手首を縛られ、その拘束具から伸びた鎖が天井まで伸びている。

 吊るされている……爪先立ちの苦しげな姿勢で!

「あれっ? 亜理紗さん、早いですね!」

 目の前の光景にそぐわない、のんびりとした口調で女が挨拶をする。

「えっ……?」

 目をしばたくと、そこには全裸の女ではなく、ベージュのスウェットスーツを着た伊吹早奈恵(いぶきさなえ)が、取り外した蛍光管を手に亜理紗を見下ろしていた。

「……早奈恵ちゃん!」

「あ、驚かせちゃいました? これ、切れてて……」

 と、天井の蛍光灯を指す。
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