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催眠玩具
第8章 ほんとうのこと

「高城さんが様子を見に行くって……」

 探るような目つきでサチが亜理紗の顔を覗う。

 高城と二人でアート・トリルの経理業務を担うサチは社員の中でも一番彼と親しい。

 そしてこの頃、妙に亜理紗と高城との仲を勘ぐる様な素振りを見せる。
 亜理紗は自分の気持ちを他の誰にも打ち明けたことは一度もないというのに。

 もしかすると、サチも……。

 昨日、自分のいないオフィスで帰り際、高城とサチの間にどんなやりとりがあったのだろう。

 ふと、亜理紗は情景を思い浮かべる。

 ――社長の家……行くんですか?

 ――ああ。心配だからね……風邪か何かだと思うんだけど……

 ――私も心配です。

 ――伝えておくよ。

 ――違います、私が心配なのは……

 高城の手に触れ、引き留めるサチ。
 驚いて振り向いた高城の胸の中に飛び込み、潤んだ瞳でその顔を見つめる。

 おずおずと、しかしやがて強くサチを抱く高城。
 温めるように背中をさするその手はやがて、なだらかなサチの曲線を伝い降り……。
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