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催眠玩具
第8章 ほんとうのこと
例えば、もし。
昨日の夜、彼を部屋の中に招き入れていたら……。
甘い想いが込み上げる。
ああ、そうか。
と、亜理紗は納得した。
その体験を無意識のうちに悔しがって、こんな妄想が思い浮かぶのだ。
いやらしい……非日常的な情景が。
「……しっかりしないと」
そう呟いてデスクにつく。
ノートパソコンの電源を入れる。
そろそろ他の社員たちも出社し始め、入口近くの更衣室のあたりでは早奈恵とサチに混じって何人かの挨拶の声が飛び交い出していた。
OSが立ち上がり、メールの処理にかかろうかとしたとき、再び亜理紗に声が掛かった。
「おはようございます。お忙しい所すみません……亜理紗さん、昨日のスケジュールで変更が出た件の調整なんですけど……」
顔を上げると、デスクの傍に伊藤未織(いとうみおり)がやって来ていた。
スマートフォンと、それよりひとまわりほど大きい革表紙の手帳を重ねて手にした、いつもの彼女のスタイル。
まだ始業時間でもないのに、いち早く仕事モードに入っている。