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催眠玩具
第8章 ほんとうのこと

 なにしろ、友人のほとんどは結婚して家庭に入っていたり会社勤めなのだ。

 事業主――亜理紗の場合、今では個人ではなくアート・トリルという会社組織を率いる身ではあったが――としての悩みを話して理解して貰える貴重な存在だ。

 今回の取材は、由美と係わりのある雑誌の依頼で、注目を浴び始めた亜理紗とアート・トリルの躍進の秘密を掘り下げるという特集の企画だった。

 由美と話がしたい。

 彼女と二人のときだけは、色々な事を忘れて、すべてが楽しかった学生時代の気分に戻れる。

 今朝から続くおかしな妄想のせいで心細くなっていたのだろうか、亜理紗はついそう思ってしまった。

「わかったわ。取材が終ったら、午後から病院に行くから……そういう予定にしておいて」

「はい」

 未織がうなずき、手帳に書き込む。

「それで、昨日のスケジュールで変更が出た件については……」

「あの、大丈夫です。ほとんど処理できましたから……詳しいことはメールにしておきます」

 明らかに亜理紗の体調を気遣って未織が報告を切り上げる。

「それじゃ、山木さんがいらしたら、会議室にお通ししますから……」
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