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催眠玩具
第8章 ほんとうのこと

 亜理紗の眼から新たな大粒の涙が溢れ出す。

 自分の為に泣いているのではない。
 どうしてこんなにも残酷なことができるのか。
 どうしてこんなにも無慈悲なのか。

 人の心がない。

 そう。
 少年の、その心はきっと空っぽなのだ。

 彼の空虚に今こそ触れて、そのあまりの哀しさに……底のない闇の寂寥に、孤独に、亜理紗は震えたのだ。

「……じゃあ、どうして欲しいの?」

 ただひたすら嗚咽する亜理紗を前にして、少年が初めて困ったような顔を見せた。

「どうして……どうしてそっとしておいてくれないの……もう、充分愉しんだでしょう? 私を惨めに……弄んで……まだ気が済まないの……?」

「亜理紗の玩具はそんな事を……」

「やめて! もう……たくさんよ!」

 泣き崩れ、目の前の高城の体に抱きすがる亜理紗。

「ああ……あああ、ああ……高城さん……ああ、ごめんね……ごめんなさい……愛してる……愛してるの……ごめんなさい……」

 その姿に、少年は深いため息をついた。

「わかったよ……亜理紗、わかった。そんなに言うならやめてあげるよ」
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