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催眠玩具
第9章 美獣の檻
普段、仕事の中でどれほど体が接触する機会があるか、咄嗟には答えが出ない。触れる事もあるような気がするし、そうそう触れたりしないようにも思える。
高城さんは断じてセクハラするような人ではないし、むしろ逆にそういうことには人一倍気をつけてトラブルを避けるタイプだ。
しかし、女子社員の中には気安い性格の者もいる。
例えば……
と、思いを巡らせていたとき、溌剌とした男の声がオフィスに飛び込んできた。
「……おはよう!」
屈託のない、明朗な声。
高城さん……!
いつも通りの、見る者を元気にするような快活さで、スーツ姿の高城さんが革の鞄を片手に下げ、空いた手を上げて一人一人に朝の挨拶をしながら、経理のデスクへと大股で歩いて行く。
「高城さん、昨日は社長のお見舞い……お疲れ様でした!」
同じ経理で隣りのデスクのサチがそう言ってクルリと椅子を回し、立ちあがり……近づいてきた高城さんの肩に手をやろうとするのを見て、私は口から心臓が飛び出しそうになった。
「高城さんっ……!」
思わず大声を出してしまった私に、驚いた皆の眼が集まる。
顔が火照った。
でも、なりふりかまってなどいられない。
取り繕う言葉を、そしてこの場を切りぬける方法を求めて……私はほとんど口から出まかせに言葉を続けた。