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陽炎 ー第二夜ー
第1章 女郎蜘蛛
翌朝

ウメは何事もなかったように朝餉の膳を運んで来る。

兵衛もそれに対しては反応せず。

朝餉をきっちりと平らげ、畳に手を突いて頭を下げる。

「思わぬ宿りとなり、大変世話をかけた。礼を申す。」

「兵衛殿さえ良ろしければ、このままご逗留いただいても構いませんのよ?尋ねる者とてない家ですもの。
その方が私も嬉しゅうございます。」

「また、まみえる事もあろう。とにかく、今回はこれにて。文無しの身であれば宿り賃というわけにも行かぬが、それでもよろしいか?」

「お引き止めしたのはこちらですもの。また、いらして下さいませ」

ウメは深々と頭を下げた。

金を要求されるでもなく、昨夜のことを蒸し返されるでもなく。

兵衛はウメの家を離れる。


結局、ウメの魂胆は知れぬまま………
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