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陽炎 ー第二夜ー
第2章 勝負師
いきなり突きつけられた別れの言葉に、俺は混乱した。

「あたし、引っ越すの。今度あんたがここに来ても、ここは空き家か別の人が住んでるよ。」

「何だよ、それ…」

「先から所帯持とうって言ってくれてる人がいるんだ。その人ンとこに行くことにした。だから、あんたとももう終わり。」

「所帯って…そんなん聞いてねぇよ」

「当たり前さね。今初めて言ったんだから。」

「そんな、急に言われても…」

「あんたが何時までも煮え切らないからだろう?
あんたの相手があたし一人じゃないってことぐらい、ちゃんと知ってるんだ。
あんたが他の女と切れて、あたしと所帯持つってんなら、あたしはあんたを養ってくつもりだった。
けどあんた、そんな気更々ないだろ?
今のあんたは鷺じゃなくッてただの野良猫じゃないか。
住む家もない、ふらっとやって来て、一晩抱いて、朝餉食ったら出てって。そうやって色んな女に食わせてもらってんだろ?でもね、
あたしだって、いつまでもそんな都合のいい女じゃいられないんだよ。
親に孫の顔だって見せてやりたい。
あんたみたいなろくでなしといつまでも遊んじゃいられないんだ」

ろくでなしって…確かにそうだけど。面と向かって言われるとなかなか傷つく言葉だな。
でもトヨの言うことは尤もで。ぐうの音も出ない。
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