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陽炎 ー第二夜ー
第2章 勝負師
寒さに爪先が痺れる。
昨夜の雨でぬかるんだ道は、凸凹のまま寒さで凍っていて。
どうかすると滑りそうで、酷く歩きにくかった。
そんな道を、慎重に杖で探りながら、あてもなく歩いた。

あの布団も持ってくのかな。

俺とトヨの汗の染みたあの布団で、トヨは新しい男に抱かれるんだろうか。

それとも所帯持つってことは布団くらい作ってくれんのかな。

相手はどんな奴なんだろう。

考えても仕方ないことばかり、グルグルと頭を巡る。

俺は、トヨのことが好きだった。

抱き心地のいい、ふっくらした身体。
本人は気にしてたけど、ふっくらした顔も。
顎に少し膨らんだ黒子があって。

仕事が髪結いだから、手は少し荒れてたけど、指が細くてしなやかで。

性格はきっぷがよくて、情に厚い。

でも、すごく可愛い声で啼く。

本当に、好きだった。

そのトヨを、他の女と同列に扱って、傷つけたのは俺だ。

だって、仕方ないじゃないか。

目が見えなきゃ、まともな職になんてつけやしない。

俺にはヒモが精一杯だ。

一人の女に、そんな負担掛けられない。

だから、養ってくれなんて言えなくて、今晩泊めてって、たくさんの女の家を渡り歩くのが関の山だった。

それが、女の矜持を傷つけたと言われたら、もうどうしようもないじゃないか…


歩きながら、涙が頬を伝う。

まだ人気もまばらだから、俺は気にせず歩いた。

泣いたら、また目が赤く腫れるのかな。
俺には見えないから、そんなの気にした事もなかったけど。

でもあの人に会った時、それを指摘されたんだ…
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