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陽炎 ー第二夜ー
第2章 勝負師
すぐ近くで俺の手を握り、あの人は言った。

「俺と、来ないか?鷺」

「俺は、鷺なんて名前じゃないよ」

「呼んで欲しい名があるならそれを教えろよ。なけりゃ鷺でいいだろ。鷺に似てるし。」

「別に、名前なんてどうだっていいけど…俺なんか背負い込んだとこで、なんもいいことなんかないぞ。何をするにもただの足手まといだ。」

「そりゃ目あきと同じことしようとするからだろうが。いいか?人には適所ってもんがあんだ。目の見えねぇ人間てのは、他の感覚が優れてる奴が多い。耳やら鼻が良かったり、勘が鋭かったりな。それを上手く使や、目あき以上の働きができんだ。俺にはお前の目を見えるようにはしてやれねぇ。
けど、世の中を見せてやることはできるぜ?」

「世の中…?てめぇの顔一つ見れねぇ人間に世の中なんか見える訳ないだろ?」

「見えるさ。俺についてくりゃあ、な。生きるってな楽しいってことを、俺がお前に教えてやるよ。」

その人は市九郎と名乗り、その日から俺の名は鷺になった。
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