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陽炎 ー第二夜ー
第1章 女郎蜘蛛
しばらくの間、その体勢のまま余韻に浸っていたが、ウメが腰を上げるとずるり、と呑み込まれていたものが吐き出される。

「兵衛殿…」

ウメはきゅっと兵衛の首に抱きつき、その耳元に口唇を押し付ける。

兵衛は指でその紅をぐいと拭い、

「一夜の情け、で良いのだろう?」

冷めた一瞥を向ける。

ウメは哀しそうに眉根を寄せ、熱っぽく潤んだ目で兵衛を見た。

兵衛はウメの身体を退かすと、手早く着物を整え、


「これで眠れるとよいな」

と突き放した。

甘い余韻など無用、といったつれない態度に、ウメは目を伏せ、単衣を整え、部屋を出て行った。
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