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恋花火***side story
第20章 シアワセ日和
「羨ましい…」
一部始終を共に見ていた茜は、ボソッとそんなことを呟いた。
「おまえ欲求不満か。笑」
「…まぁそんなとこ。」
この時は茜の言葉を深く考えてなかった。
欲求不満
それって茜だけじゃなくて
実は俺もだったらしい。
夜寝る時になって
思い出したキスシーン。
思い出したというか、実はあれからずっと頭から離れない。
…おかしいな
あっちの欲はもう燃え尽きたはずなのに。
触れてもないのに大きくなる男の部分
おもむろにそこに手を伸ばす。
頭の中にはえくぼの可愛いあの子の顔。
あの可愛らしい唇はどんな感触なんだろう
触れてみたい
キスしてみたい
熱い精の放出とともに虚しさに襲われる
…なにやってんだ、俺。
菜月ちゃんごめん。
頭の中であれこれと弄んでしまったことに、強い罪悪感を感じる。
「陸先輩、おはようございます!」
翌日、偶然廊下ですれ違い、初めて単体でいる時に挨拶された。
昨日実は君をオカズにしたなんて最低だけど
声を聞いたら、また今日もしちゃうかもしれないと思った。
菜月ちゃんはタケルのことが好き。
きっとタケルも菜月ちゃんのことが好き。
わかっているけど
なぜ、俺は
「…ごめん。」
無意識に口から出た言葉。
菜月ちゃんはキョトンとしてる。
いきなりごめんだなんて、わけわかんねーよな。
そんな俺を、菜月ちゃんは笑った。
初めて自分に向けられた笑顔に
身体の奥が疼いた。
ふと気付けば、時間さえあれば菜月ちゃんのことを考えていた。
エリカとまるで正反対の女の子。
笑顔を見るたび、ドロドロの自分が救われるような、浄化されるような
不思議な気分になった。