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恋花火***side story
第20章 シアワセ日和
その日の夜、なかなか寝付けなくて


一人で宿舎の休憩所でぼんやりしていたら


「陸」


名前を呼ばれ振り向くと、茜がいた。


「さっきのアレなんなのよ。」


茜は、銭湯での俺の態度を咎めてきた。


「別になんもないけど。」

「ふーん。陸さぁ最近ちょっとイライラしてるよね?」


言われて気付く。


そういえばここ最近は笑ってないかもと思った。


毎日の部活もハードだし。


それに…


って、あとはなんだっけ。


モヤモヤする。


「…とにかく、あんまりイライラしてたら一年生に怖がられるよ?」

「…別にどうでもいいし。」


周りになんて思われたって関係ない。


毎日生きるので精一杯だし。


「菜月ちゃん気にしてたけど?」

「へぇ。…え?」

「お。食いついた。」


茜が言うには、俺のさっきの対応を気にしてたってことらしい。


「私のこと嫌いなのかなーみたいなこと言ってたよ。」

「それはない。」

「その反対だよね?」

「うん、嫌いとかなるはずない。むしろ好きだし。」


思わず出てしまった本音に、自分でも驚いた。


そんな俺に茜は深刻な顔をしてきた。


「…菜月ちゃんはダメだよ?タケル君が…」

「だからー、好きってその好きじゃねーから。後輩としてってこと。」


自然と口調がきつくなる。


菜月ちゃんが手に入るなんて思ってないから。


まして手に入れようとも思ってない。


菜月ちゃんのいる世界は、到底俺なんかの手が届かない遥か遠くに存在してる。


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